あの絵を肴に

美術館愛をお酒を片手に語っております

放心ファンタスティック

「かわいい」に間違いのない美術館。
 それが府中市美術館であります。

先日、その府中市美術館に行って参りました。
「ファンタスティックー江戸絵画の夢と空想」展です。f:id:eleventons:20160425101931j:image
看板からして漂う確かさ。
与謝蕪村の虎、河鍋暁斎の蛙、長沢蘆雪の素朴な風景。
間違いない、絶対かわいい。
蕪村の虎なんて、もうほんとかわいらしい。
これからこの虎に会えるんだな、嬉しくって楽しみでしょうがない。

入館して券を購入。
券にも蕪村の虎。
…うむ。かわいい。

展示は、気象、花、風景、鎖国時代だったゆえの想像上の異国、想像上・本物の動物、物語、妖怪、歴史など、テーマごとにファンタスティックー 空想的な、幻想的な、すばらしいー という言葉を連想させる江戸絵画が並べられております。

まずは蘆雪の月の青、応挙の雲の白、ちょっと後から若冲の海の黒。
色が胸にしん、と染み渡ります。
美しい。

妖しくも粋でいなせな妖怪図は国貞。
同じ妖怪図でもどこかにクスッを仕掛ける国芳

こりゃあ一体なんですか?ギャグ漫画ですか?というような作者不明(シュールさは「ピューと吹く!ジャガー」のうすた京介さんのよう)、頓珍漢な異国風景図。
蕭白のお約束、不気味だけど憎めない滑稽キャラクター。
あなた、絶対現代のギャグ漫画作家さんですよね?絵、すんごい上手いですね?と言いたくなるようなモダンな構図、スケールもばかデカい、大迫力の小泉斐の竜に馬師皇図屏風。
他にも、これほんとに江戸時代の人が描いたの?今の人が描いたんじゃないの?、と思わせるような絵が何点かありました。
時を超えるファンタスティック。

そしてかわいいファンタスティックの真骨頂、動物達。
絶妙な抜け感、ちんまい手、目が点の亀。
さすがは若冲、ゆるいはずなのに逆に巧さに圧倒されました。
確かその隣に田公実の竜、虎、鷹、鯉の四点。
そうそう、江戸時代のこの虎がかわいいんだ。
前回府中市美術館に来た時の「動物絵画の250年」展ではいっぱい虎がいて、図録を買ってその後に行った内田かずひろさんの個展でみんなで鍋をつっつきながら見たら、みんな虎かわいい、虎かわいいって言ってたっけ。

豊田市美術館の館長さんが書かれた新聞のコラムによると、江戸時代の画家は本物の虎なんて見る事ができなかったから、身近な猫やすでに毛皮になってしまった虎を見て想像を膨らませて描いたのだそう。
だからこの時代の虎達が総じて耳がちんまいのは、毛皮の耳が縮まってしまっていたからなんですって。
それでこの時代独特のユーモラスで愛嬌たっぷりの虎達がたくさん描かれたんですね。
想像力、万歳!!

そんな時をも超える想像力が素晴らしいファンタスティック展。
本当にファンタスティックだったのです。



…でも、蕪村の虎には会えませんでした。

まず、券を買った時に書いてあったのです。この展覧会は前期と後期で作品は「すべて展示替え」と。
私が行ったのはすでに後期。
予感。
蕪村の虎には会えない。
そして予感的中…!
やられた…!自分の迂闊さに…!
ばかばか私のばか!

前回来た「動物絵画の250年」展の時も後期に行って、図録を見たら前期の作品も素晴らしかったから、今度から府中市美術館は前期と後期、両方行く事にしよう、と思っていたはず。
府中市美術館のサイトだってちゃんと見とけば書いてあったのに。

楽しみにしていた蕪村の虎に会えず、放心した状態で図録をパラパラ…。
やっぱり前期の展示も素晴らしかった。
どうしてこれを自分は見逃してしまったのか。
ショックが大きすぎて図録が買えなかった。
そして今それを大変悔いている。
前期の展示もせめて図録だけでもじっくり堪能できたらよかったのに、と今思う。

後悔だらけの府中市美術館ファンタスティック展。

教訓。

前期と後期の展示替えの情報を事前にちゃんとチェックするべし。
どっちに行くか迷ったら、とりあえず前期に行っておくべし。(府中市美術館の場合、2度目(後期)が半額!ここが府中市美術館のいいところ!かわいいだけじゃない!お財布にも優しい!)
止むを得ずどちらかにしか行けないのなら、せめて図録を買うべし。

肝に銘じます。

また、会いにいきます。