あの絵を肴に

美術館愛をお酒を片手に語っております

一言、一枚、一冊。

くまもんが、SNSからの発信を停止している。
被災者優先のためという。
あの熊本のゆるキャラが、作業服に身を包み、ヘルメットを被り、黒い丸っこい手足を動かして瓦礫を撤去したりとか、そういう事ではもちろん、ない。
地震があってからくまもんの安否を気遣う声が全国から多数寄せられたというけれど、そういうことも含めて、熊本県が今現在ゆるキャラを介した活動をしている場合ではないという事なのだろう。

私にはお気に入りのクマがいる。
ファーファ」という、柔軟剤や衣料用洗剤の白いクマのマスコットだ。
彼は(男の子なのか女の子なのか、時に物議を醸されているが)くまもん同様ツイッターをやっている。
決めゼリフは、「ふんわり☆ふんわり☆」。

そんな彼のツイッターも現在停止中でファンに寂しい思いをさせている。
「お休み中や遊びに夢中の時などは返事ができない時があります」とあるから、遊び呆けて疲れてそのまま遅い冬眠に入ったのか、はたまた春眠暁を覚えずなのか。
「中の人が変わったんじゃないか…」と誠しやかに囁かれているが、そんな話題はファンの間ではアンタッチャブルなんである。

そんなファーファファン(ファがくどい)の私は密かに、被災地の黒いクマが活動できないならば、代わりに遠方の白いクマが活動したらいいのに、と思ったりする。
もちろんクマだったらなんでもいいと思っているわけではない。
私自身、ファンなのはファーファであって、同じクマでもくまもんや、千葉の鼠の国のダッフィーのファンでもあるかと言われたら、そうじゃない。

それにくまもんのツイッターフォロワー数約46万に対し、ファーファのそれは約3万6千弱、くまもんファンに鼻で笑われてその鼻息で飛ばされてしまいそうな、ファーファファンの数である(ちなみに今現在の私のフォロワー数は19。くまもんファンに踏み潰されても気づかれない微生物並)。

でも、いるかもしれないと思うのだ。
熊本に。
くまもんも、ファーファも好きだという人が。

そんな熊本のファンのために、呟けない黒いクマの代わりに、白いクマが今こそ呟けばいいと思うのだ。

マスコットごときがしゃしゃり出る場合じゃない、不謹慎だ、という人もいるかもしれないけれど、被災地にもいろいろな人がいて、いろいろな感じ方があると思う。

マスコットといってもバカにしたもんじゃない。
なにしろ愛されてる。
好きの力は強いのだ。
大好きなくまもんが呟けない、同じ被災地の者同士だから理解できる、仕方がないと納得しなきゃいけない状況の中で、遠くにいる大好きなクマが決めゼリフ中の決めゼリフを決めてくれたら。
「いろんなことが☆ふんわりに☆なりますように☆」
と。

誰宛てとかなくていい。
元気とか、勇気とか、希望とか、そんな大それた事じゃなくてもいい。
心の端っこが少しほぐれるような、そんなささやかな一言を、ほんの少人数にでも、送る事ができるんじゃないかと思うのだ。


最近毎朝、朝食を食べてる最中に、大変お行儀の悪い事だけれど、朝までにたまっているツイートを読む事が日課になってしまっている。

今朝はその中に、鳥好きで大変気さくな紳士のイメージの豊田市美術館館長さんのツイートがあり、文化財被災状況を心配されていた。
美術品なんてただの道楽だ、という人もいるだろう。
でも、たった一枚の絵に人生を救われた、という人だってたくさんいるのだ。
そんな美術品の事を美術品の大プロである館長さんが心配されていて、非常に心強く思った。

同じく今朝読んだツイートで、私が大ファンになったきっかけの「プラネテス」、そして各賞を総ナメにした「ヴィンランド・サガ」を現在執筆してらっしゃる漫画家の幸村誠さんのツイートもあった。

まんま引用させていただきますが、機械オンチは転載の仕方がわからないので、なんと全部手打ちで引用いたします。

「何というか、漫画をはじめ娯楽は生きていく上で後回しにされがちなもので。「漫画読んでる場合か!」ってボクもよく怒られたりしてね。でも、まあ、漫画読んでる場合じゃない時ほど気休めが必要な時だったりして。大変な時ほどお気に入りの漫画が皆さんのお手元に一冊あればいいな、と思ったり。」

思ったりです。
思います。

少しでも心を軽くする一言、一枚、一冊が、熊本だけじゃなく、いろんな状況の中で困ってる人の元に届けばいいなあと。

そしてそれを届ける人はきっと、マスコットだったり美術家だったり人気作家だったりする必要はないのです。
大事な人の大事な時のために。
それを届ける機会はみんなにあるのだと思います。